初恋の噂
携帯の着信音が鳴いた。それは昼休みのこと。談笑する友達を横目に、そっと開いて確認すれば大好きなあの人からのメール。ふふふ、と我慢できずに零れた笑みを、隣で昼食を共にしていた友は見逃すことがなかった。
「…嬉しそうね」「そう?そうでもないよ」「と、いいつつニヤけるのはやめない、と」
ぶすり、と叶女はウインナーにフォークを刺す。大きな口を開けて咀嚼する様は可愛らしい。と、油断をしていた隙に彼女は私のメールをのぞき見た。
「…ああ、噂の」「ちょっ、噂ってなに!?」「んー…の彼氏の噂」「ちっ違うって!!」
違うの?と首を傾げて、叶女は私を見つめる。目を逸らせば、肯定とみるぞと言わんばかりの目力だ。
「違うのか…」「違うって、ただの幼馴染なんだって」「そう」
まだ納得いかないのか、そうかと繰り返し呟く。私も納得はしたくはないが、その通りなのだから仕方がない。
今日も放課後に一緒に帰ろう、とメールを返しながらもやもやとする気持ちを押さえ込んだ。
「…納得いってないって顔」「…言わないで」「はいはい」
初恋を、忘れることなどできないのだった。