プロローグ

「お兄ちゃん、どっかいっちゃうの?…寂しいよ、。まだお兄ちゃんと遊びたいよ…」

天気はどんよりとした曇り空。目の前には少し痛々しげな傷を幾つか作っている、大好きな幼馴染のお兄ちゃん。彼は今からこの街から去る。去っていってしまう。手の届かない場所に、行ってしまう。

嫌だ嫌だと手を握れば、きっとお兄ちゃんは握り返してくれる。行かないでくれる。いつも私の我が儘を困ったように聞いてくれるから、きっと今回も聞いてくれる。そう思っていた。だけれど、お兄ちゃんは思っていたよりも弱々しく私の手を握り返してくるだけで、「ごめんね」とだけ告げて私に背を向けてしまった。

「お兄ちゃん…おにいちゃん!」
「………」

バタン、という音がやけに重々しい音に感じた。いつもならば、どこかにお出かけ?楽しみ!!…な合図なのに。今日に限ってはその合図ではない。

追いかけたいけれど、車に乗ってしまったお兄ちゃんに追い付く術を私は持っている訳もなく。そんなことは分かりきっていることだというのに、幼い私にとってはそんなことよりも目の前の「大好きな」お兄ちゃんに追いつきたいという思いばかりで。

走って、走って追いかけて。そして車が遠くに去って見えなくなった頃、転けて膝小僧を擦りむいて、そして、大声で泣いたのだった。大人たちの、悲痛な面持ちには気づくことなく、大声で、ただお兄ちゃんとの別れを只ひたすらに私は悲しんだ。

それが小さい頃の記憶。
湊お兄ちゃんが親戚の家に引き取られた際の記憶だ。もう10年も前になる。
あの頃の私は、お兄ちゃんにべったりで。どこに行くにもお兄ちゃんが一緒でないと嫌だった。ただの近所の幼馴染のお兄ちゃんというだけなのに。そんなことは関係なく、お兄ちゃんが大好きで大好きで、仕方がなかった。

でも月日が流れれば、それも薄れていく。平気になっていく。あの事件から10年経ち、私も中学生となった。たかが中学生、されど中学生。私も立派な女の子になったはずだ。

……けれどもやっぱり、曇り空の日はふ、と唐突に思い出してしまう。「お兄ちゃん……今どこにいるんだろう」そう呟いてしまう。涙腺が緩むのをぐっと堪える。いけない、お兄ちゃんを求めてはいけない。私は立派な女の子になってみせるんだ。
そんな弱い私を覆うように、ふと陰が差す。振り向き、その姿に私は息を飲んだ。

「…ああ、やっぱりだ。変わっていない」
「え、えあ…も…もしかして…もしかしなくても、お、お兄…ちゃ…」
「久しぶり、だよね。ごめん、いきなり現れて…帰ってきたんだ。ここに―この場所に」

会えて嬉しいよ、そう告げる彼の胸に飛び込んで。私は飽きることなく涙を流し続けた。






 

中学三年生。身長は156センチ。
湊とは小さい頃の幼馴染。美鶴、荒垣、真田とは小学生の時に知り合う。美鶴はみぃちゃん、真田はあーちゃん、荒垣はしぃちゃんという特殊な呼び方をする。

美鶴が覚醒した時期に近い時に影時間に気がつく。でもペルソナ覚醒は中三の湊が戻ってきた頃。
武器はライフル銃を所持している。射撃部所属。


ペルソナは『アシオス』⇒『テティス』。

設楽 叶女[したら かなめ]

月光館学園中等部三年生、ロボット研究部所属の身長153センチの血液型AB型

春にと知り合い、交友を深めていく。無表情、無口。
ロボット工学に富んでおり、自作で小さなロボットを作ることが趣味。
時々吐く毒舌に、周りはたじろぐ。