who are you?

 
ドラゴンという名の人類にとっての脅威がいた。
その中のひとつに、アイオトという竜がいた。それは第一真竜と位置付けられた存在であり、且つ地球に人という種を蒔いた竜であった―

「提督、この中にいる人は…いや、厳密に彼女は人というのかな」
「ユウマよ。そう難しく考えなくともいいだろう、諸々の研究により紛れもなくその中にあるのは"人間の体"であると判明しているのだからな。…それがどうしたのだ?」
「いえ、この"ドラゴンの気を纏った結晶"の中に閉じ込められているこの人は、生きているのでしょうかと思って」
「確か仮説では、仮死状態にある可能性が高いと言われていたな。だが、確かめるにもこの状態では、な」

水の中に墨を垂らしてから凍らせたかのような、マーブル模様の丸く形作られた結晶体の中には女が一人いた。固く目を閉じ、口も一文字に結び、まるで人形のようにピクリとも動かずにその中で綺麗に収まっている。

研究所のとある一室。その中心には様々な機器に繋がれ、観測されている結晶体があった。何年か前に日本のとある洞窟で発見された、謎の結晶体。その姿はあの頃から一ミリたりとも変化の兆しを見せてはいない。
物理的な攻撃にも、どんな攻撃にも、ビクともしなかった謎の結晶体。そして眠り続けている不可思議な女。
彼女がその纏い続けているその殻を破り捨て、外界へと羽ばたく日が果たして来るのだろうか。あるいは、自分がもっと強い力を手に入れ、その殻を壊してやれば…もっと早くにその時は来るのかもしれない。

力強く手を握り締めれば、それが強く皮膚に食い込む。手の中で握りしめていたそれは、発見した際に欠けたされている、結晶体の欠片。実験後に不要になったものを譲り受けたものだ。

「どうかしたか、ユウマ。そんなにこの中の者が気になるか」
「…ええ。まあ、実際には彼女ではなく、この結晶体そのものが、ですが。俺の支えでもありましたから」
「支え、とな」
「ええ、これを見るたびに思ったんです。竜がいるという確信、そしてまた来るという可能性…それを感じさせてくれる物がこれでした」
「なるほど。だからお前はこの結晶の欠片を大事に持っているのか」
「ええ」

また訪れるその時に向けて、準備は着々と進んでいる。そしてその時が来た時こそ、自分が―

「ユウマ」
「なんでしょうか、提督」
「………いや、なんでもない。ふむ、もうこんな時間か。そろそろ俺たちも任務へと向かうか」
「はい、了解しました」