燭台切

「気を失っちゃったか、まあ仕方がないか」

ぐったりと倒れた彼女の頬に流れた汗を、指先で拭う。ほんわかと、赤い頬に触れた指先で感じた温もりがやけに色っぽくに感じられて、久々の感覚にもう一度…という欲求に駆られてしまう。だが、意識のない相手にそれをする趣味など自分にはなく。ならばと思い出したのが、彼の顔だった。

「…長谷部くんも、この状態なら我慢する必要なんかないよね」

自分でも酷なことをするとも思ったが、だが昨日までの長谷部ことを思い出すと致し方ないと勝手な結論を出す。お互いの服装を整え、まだ火照りの収まらぬ彼女の身体を軽々と抱き上げると、彼が住まう部屋へと歩みを始める。
腕の中で今だ荒い息の彼女に、燭台切はただ軽い口づけを落とすのだった。