その事件は、政府管轄のとある組織に委ねられた。私たちみたいな立場の人間が到底関わることのないような、そんな「とある」組織である。顔を布で覆った、いかにもな人たちに囲まれて、牢獄へと連れて行かれた私は、尋問の日々を過ごすことになる。深緑殺人の容疑が掛かっていたのだ、並大抵のことでは解放してはくれなかった。

薄暗い牢に囚われの日々であったが、それもある日突然終わりが来る。深緑の上司であると告げた人物がこの牢へとやってきたのだ。彼は重い牢屋の扉を片手で開けた。

「出ていい、そして今すぐに深緑の本丸に行ってくるといい」「……?」「君が犯人ではない、という証拠がみつかったのだ。これで無罪放免、君は晴れて自由の身だ。これからのことは追々伝えよう。今はとにかく、そこへ」「?」

よくは分からなかったが、その人からは何か同情の念のようなものが感じられた。同情、憐み。だがそれに関して問いかけたくとも、拒絶した雰囲気が、その問いをかけることそのものを躊躇わせる。私はただ無言で、後ろについてかつての深緑の本丸へと急ぐのであった。