燭台切、長谷部

長谷部が花を眺めている。時折ため息をついては、そっと慈しむように花を撫でていた。その姿はまさしく恋する乙女。燭台切は背筋をゾッとさせた。

「…何してるの、長谷部くん。何か変なもの食べた?」「いや、今日はまだ何も食べていない」「それも問題ありだよ?!」

今は夕刻である。まだ陽は出ているというものの、一日の半分は経っているのだ。だというのにも関わらず、長谷部はため息をつきながら花を愛でていたという。何かがおかしい。だからか、この花壇にいつも見える歌仙の姿が見あたらないのは。

「ねえ…どうかしたのかい、君。おかしいよ、花を愛でるようなそんな繊細な性格してないでしょ」「…燭台切」「うん?」「俺は恋をしているのかもしれない」「……んんッ?!」

燭台切は再び背筋をゾッとさせるのであった。