長谷部、小狐丸

スヤスヤと三日月が眠りにつくあの部屋に、主と呼ぶ声が響いた。ギクリと身体を強張らす。書物を眺めていた小狐丸もピクリと反応をした。

「…長谷部さん、何かありましたか?」「いえ、御用がないかと思い参りました」「特に今は…あっいや。強いて言えば、歌仙さんが夕餉の準備をしているそうなので、お手伝いして頂ければ嬉しいですね」「…そう、ですか」

恭しく去っていく長谷部。小狐丸はそんな彼をいつまでも警戒心の強めた視線で見つめていた。

「…お主、あの者に好かれておるぞ」「そりゃあ…」
「思うに、お主は彼奴への評価を誤っておる。文字通りの好意だ、間違えてはならぬ」
「え?」

小狐丸の真剣な眼差しが自分を射抜いた。