獅子王、江雪

「畑仕事だけ、やっていたいです…」「…あのなあ」

獅子王と江雪が畑仕事をしていた。ゆっくりとした動作で畑を耕す江雪に対して、獅子王は勢いよく土を耕し続けている。陽の光が直に降り注いでいて彼の身体を暑くさせていた。水が飲みたい、と思うと同時にくらりと目眩がしたので、鍬を一旦下ろして、畑をでて木陰で一休みをする。
どうやら江雪は疲れていないようだ、暫く耕して空を見上げていた。サングラスのお陰か、陽の光の影響はあまりないようだった。

「これが芽吹いて、明日の糧となるのですね」「そうだなあーへへっ。楽しいぜ」「…そうですね、楽しいです」

獅子王は笑いながら、主が持たせた水筒の蓋を開けて口を付ける。水分補給にと、スポーツ飲料とやらを溶かして渡してくれた。それは一口飲みだけで甘く身体に染み渡っていくようで、ほうっと吐息を漏らす。一息つくと、再び畑仕事を再開した。
鼻歌を歌い始めた江雪の隣で、獅子王もまた小さく鼻歌を歌う。二人の合唱は夕方、宗左が夕餉に呼びに来るまで続くのであった。