浦島、蜂須賀、獅子王

刃と刃がぶつかり合う音が本丸中に響きわたる。それを不信に思った獅子王は、数日ぶりに部屋から出るのであった。音の発生源を辿れば、今まで使われることのなかった道場から聞こえてくる。入口からそっと覗き込んだ。
そこでは蜂須賀と浦島の二人が手合わせをしている最中であった。刃と刃がぶつかり合い、共鳴している。獅子王の本能が、疼いた。

自分も手合わせがしたい、でも怖い。手が震えていた。

「…あっ、獅子王だ!」「浦島!手合わせの途中でよそ見をするんじゃない!!」「う、ええ…そんな怒らないでくれよお」

獅子王に向かって笑顔を見せた浦島は、蜂須賀の拳を食らう。涙目になりながらも懲りない明るさが、そこにはあった。

「なあなあ、獅子王。俺と手合わせしない?しようよー」「お、俺は…」
「お姉さんが言ってたんだ、いろんな人と手合わせしたりすれば、きっともっと強くなれるーって。だから俺、獅子王とも手合わせしたい!」「浦島、無理強いは」「ねえねえー」

明るい笑顔で浦島は獅子王に我が儘を言う。ちらりと過去の光景が脳裏に浮かんできて、手の震えがより一層酷くなった。搾り出すようにして「……少し、だけなら」と俯きながら告げる。浦島は嬉しそうに握りこぶしを作った。

「あんまり痛くない感じでお願いしまっす!」「……ああ」

二人は対峙し、そして剣を交えるのであった。