浦島


引っ張っていた腕が、立ち止まり、動かなくなる。どうしたのか、と後方を見やれば、涙をぽろぽろと流して浦島は肩を震わしていた。

「俺、弱いから主からいらないって…なのになんで」 「言ってたのはその人であって、私じゃないからね。別に私は君がいらないとは思ってないよ」
「だって、でも…俺が強ければ、主が俺を嫌うこともなかったし、それで兄ちゃんたちに斬られることもなかったんだ。俺のせいで、皆壊しちゃったんだ…」
「弱いのだって、他の刀剣たちと比べて練度が低いからで、いくらでも強くなる余地はあるよ。それにさ、強くなれるのに、わざわざ何もせず強くしなかったのはその人の自分勝手な判断のせいであって、それは浦島が悪いんじゃないよ」「…そんなこと」「あるよ」

「負けないで、そんな一方的な悪意に、今度こそ負けないで。可能性はまだ、君にはある。そして私が今度こそ、その可能性を引き出してみせる」「………」


目を閉じて、ボロボロと零す涙は、彼の手の平に下りてきた亀吉の甲羅に落ちては跳ねてを繰り返す。亀吉はというと、その雨が降り止むのをジッと甲羅の中に潜んで待っていた。