小狐丸、三日月
穏やかな寝息を吐きながら、彼は目を閉じている。その意識が覚めるのはいつの頃だろうか。前の主に連れて行かれた精神は、いつ解放されるのだろうか。「また、きたのか」
「小狐丸…さん」
「ふん。あれだけ近づくなと言っても、貴様は相も変わらず此処へと足を運ぶ。なんだ、貴様、三日月殿のことを好いておるのか」
「いえ…ただ」
「ただ?」
「なんだかとても、落ち着くのです。だから、ついここに来てしまう」
「……」
「ごめんなさい、彼に手を出す気は全くないのです。でも」
「ふん。……分かった、分かったからそのような泣きそうな顔をするでない」
ふう、と溜息をついて、小狐丸が隣に座る。わしゃわしゃと頭を撫でる。
「私の居るときであれば、構わん。ただ、なにも言わずに近づくのはやめてくれ。三日月殿は今、戦えぬ」
「…はい」「必ず、声を掛けるのだぞ。避けたりなどせぬ。だからきちんと告げるのだ」「………はい」
そっと手を下ろした小狐丸を盗み見れば、むすっと少しばかり機嫌の悪そうな顔をしてむくれていた