獅子王、小夜

全身を襲うダルさと痛みと苦しみ、その全てと戦いながらなんとか自室へと戻る。障子を開けて、中へと倒れこめば、全く身体が動かなくなる。辛い、痛い、苦しい…叫びたい思い全てが気怠さでかき消される。
スッと黒い影が私の身体を覆う。誰かと思えば、それは獅子王で。その目には一筋の光が点っていた。

「…身体、動かないのか?」
「………」
「喋ることもできない?」
「……ふ…」
「……じゃあ、いらないよな。アンタ」

己を抜くと、それを垂直に私の心臓へと向ける。身体が動けない私に抵抗する術はなく、振り下ろされる刃をただただ見つめる他ない。殺られると、目を強く瞑れば。キン、という音が響いた。

「ダメだよ、そんなことしちゃ」
「…なんで」「させないよ」「……」

物音が消えて、そっと目を開ければそこに獅子王の姿はなく。いるのは抜き身の自身を構える小夜だけ。それを仕舞ってから、ゆっくりと小夜は近づいてくるのだった。

「大丈夫…じゃないよね。ごめん、気が付けなくて」
「…いいんだ、頼んだお仕事、して…くれてたんだね。ありがとう」「………」

開けていた障子を締めると、小夜は掛け布団を取り出してそっと私にかける。そして頭を軽く上げて、膝をそこにすべり込ませると膝枕の格好となった。

「休んで」「…でも」「大丈夫」
「僕が番をするから、安心して寝て」「……」

小夜の頭を撫でるその手の温もりを感じながら、瞼を閉じればそれだけで緊張が解けて、深い眠りへと誘われていくのだった。