燭台切

「ねえ、君ってあまり警戒心ないよね。こんな異様な場所に来ておいて。のこのこと僕の言うとおりに来るだなんて」
「………」

厩舎の裏に、何かあるのだけれど一緒に来てくれない?そう笑顔で言われたから、何かあってはことだと思ってついていけば。陰に来た瞬間に厩舎の壁に縫い止められる両腕。更に逃げられないように私の足が彼の足を挟むような格好をさせられている。見下ろす彼の視線が恐い。目を逸らせば彼は再び笑うのだった。

「本当…お馬鹿さんで、可愛いよ。ねえ、聞いて?僕、昨日長谷部君とシたんだ」
「え」
「驚いた?でもよくあることなんだ…最近はね。だって解消する方法がないからさ。自分で慰めるのにも限界があるからね、分かって?っていうか原因、誰かわかっている??」
「え、いや…その」

掴む手首が強くなる、ギリギリと締まる手首が痛い。そう訴えたくても、恐怖でそのことを告げる勇気がない。それでもと震える唇を薄く開けば、その隙をついて口を付けて、舌をねじ込んでくる。口内を犯す水音と拒む私の衣擦れの音が風の音とともに場に響く。

「んっ…ふふふ…初めてにしては随分といやらしい目をして。準備は出来たかな?」
「うぅふっ…ぐ…ぅ…」
「泣いてもダーメ。僕ももう、我慢が出来ないんだ」

今まで感じたことがない感覚に抵抗の弱くなった私になどお構いなしに、器用に片手で衣服のボタンを外していく。晒された胸元に顔を近づけると、燭台切は赤い痕をつけて深い笑みを浮かべた。