燭台切、長谷部

蝋燭の火が揺らめいたことによって、己の部屋に何者かが侵入してきたことを悟る。だが、後ろを振り向くことなく、彼はその人物を言い当てた。

「どうしたの、長谷部君。やたらと息が苦しそうだけど」
「ふん…貴様に何がわかる」
「わかるさ、だって同じ主に仕えていたんだからね」

すぐ後ろにいる長谷部の吐く息は少し荒れ、頬も蒸気していた。その妖艶な雰囲気を感じ取った燭台切は小さく微笑む。ジャケットを脱いで、自身のシャツのボタンに手をかければ、長谷部もそれに呼応するように服を脱ぎ始めた。

「まだ新しい主は主命をだしてくれないのかな?ああでも、そういうことがまだなのかもね。そういうニオイがするじゃない」
「ふん…そんなことは分かっている。初心なことも、な。ただその姿に情欲を掻き立てられるのもまた事実だ」
「だから我慢できなくなった…ってところかな。わざわざ僕のもとにくるってことはそういうことだよね。あーあ…じゃあ今日は僕が女役かな、残念だなあ。そろそろ僕も我慢の限界だから」

溜め息をつきながらも、その顔には笑みが浮かんでいる。ふっと蝋燭に灯る火を消せば、雪崩込む音が暗闇に響いた。