獅子王

夕飯を食べない者がひとりいる。その者のために御握りを作り、彼の部屋に行けば。やはり獅子王はそこにいた。身体を震わせながら、彼は部屋の隅で鵺に包まってる。そっと彼を怖がらせないように近寄れば、ごめんなさいという言葉が耳に届いた。

「俺…なんにも出来ない、から。いらない、から……今度こそ刀、解されるんだ」
「そんなこと」
「あるんだ…あるんだ…」

あるんだ、と再び繰り返すと、彼は何も答えなくなる。

「御握り、置いとくから食べてね」
「………」
「いつも、食べてくれてありがとう。また持ってくるね」

そっと後ろ手に障子を閉めれば、小さく呻く声が響いてきた。