左文字兄弟
「あの、なぜロックが好きなのでしょうか?」私の部屋にある、CDコンポにどこぞのバンドのCDを入れようとしている江雪に問いかける。すると大真面目な顔で彼はこういった。
「歌は平和をもたらす秘めたる力を持っているのです…」
「(マク○スみたいな…)」
「そして歌こそが和睦への最短ルート…時代はロック…そう、我々にはロックが必要なんです!だから!!」
「はいはい、兄さん。そこまでにして曲を流してください。その話になると長いんです」
「む…失礼しました」
いそいそとCDをコンポに飲み込ませると、再生ボタンを押そうとする江雪。そのとき、素早く小夜が私の耳に栓をする。同時に掛かる音楽の大音量よ。全身を震えさせるほどの音量に口をぽかんと開けていると、小夜が私の袖をちょいちょいと引く。
「ごめんね」という文字を書いた紙を見せてくる小夜の申し訳なさそうな顔は、多分一生忘れないだろう思った。